衣ぼろでも心はきらり

  




「あら? どうしたの、あかずきん。ずきんが破れちゃってるわ!」
「え?」
 ヘンリエッタに言われてずきんを見る。確かに、ずきんの裾が破れていた。
「うわぁ〜! やっば、どうしよう! どっか引っかけちまったのかなぁ」
「しょうがないわね。貸してみて。私が縫ってあげるわ」
「やめた方がいい」
 間髪入れず、ルートヴィッヒが口を挟む。
「おばあさんの形見の、大事なずきんなんだぞ? お前が縫って、直すどころか布きれになってしまったらどうするんだよ」
「し、失礼ね! がんばったらきっとその、大丈夫だわ!」
「そうだぞ! ヘンリエッタをバカにすんなよ!」
 かばおうとしている当の本人からそんなことを言われても、ルートヴィッヒは腹を立てる気にすらならなかった。
 かわいそうなあかずきん。
 お前は何も知らないからだ。
 ヘンリエッタの不器用さを。
「どうしてもって言うんなら、そのずきんは仕立屋で直してもらって、布を買って新しくずきんを作ってやれよ」
「! ルートヴィッヒ……それ、とってもいい考えだわ!行行きましょ、あかずきん!」
「わーい! 行こうぜ行こうぜ!」
 はしゃぎながら宿屋を後にする二人を見送り、ルートヴィッヒは軽くため息をついた。

 その後、ヘンリエッタが作った新しいずきんは、おとなしく布を被っていた方がまだ様になるという代物だったが、あかずきんは大喜びで身につけていた。
「へっへーん! いいだろー!」
 一片の曇りもなく自慢するあかずきんの姿に、ルートヴィッヒは目頭を押さえたくなった。
 雑巾の方が上等に見えるほどの失敗作なのに、そんなに喜ぶなんて。
 なんてかわいそうなあかずきん。
 お前は何も知らないんだな。
「よく似合ってるじゃねーか。
 お前は今日から『ぼろずきん』だな!」
「あら、ハーメルンの分もあるのよ!
 お店で黒い布が大安売りしてたの」
「ん、だとォ!?」
 満面の笑みでヘンリエッタが取りだしたのは、ところどころに穴が空いていて、ちょっと生地が伸びている上に糸がほつれている布の加工品だった。
「あーー! おれのより大きいじゃんかー! ずるいぞハーメルン!」
「しょうがないじゃない、ハーメルンは背が高いんだもの。
 あかずきんが大きくなったら、また新しく作ってあげるわ」
「本当か!? よーし! おれ、めいっぱい背を伸ばすからな!!」
 二人が未来に向けて約束を固めている隙に、ハーメルンはヘンリエッタ作の布の加工品をこっそりと捨てた。




後書き(森矢かおり)
一番好きなのはあかずきんです。伏未からのメールで、「メリケンサックをつけた男の子」と聞いた時は「!?」ってなりましたが、ストーリーを見せてもらったらあまりのかわいさに夢中になりました。
ヘンリエッタとあかずきんの純粋パワーは最強だと思います(笑)


姉である森矢かおりに、グリム書いて〜書いて〜と縋り続けて書いてもらいました。


back