−眷恋−






鏡の前に座し、遮那は己の言った言葉を思い返した。
その言葉は弟、普賢に放ったものだった。


普賢は迷っている。八咫の一族を守るために必要な、二つのもの。
その一つ、阿修羅の太刀の使い手が、普賢と近しい者であるためだ。
否、近しいという言葉は適切ではない。
普賢はその者を姉のように慕いながら、姉に対するもの以上の想いを抱いているからだ。
故に遮那は先の言葉を普賢に向けて放ったのだ。


(阿修羅の娘があの者でなければ、まだ偽り続けることが出来たであろうに)
偽りながらも、弟としてでも傍にいられたのだ、普賢は。
だが阿修羅の娘は偽り続けることは叶わない。
あまりにも深く関わり過ぎているためだ。
何も知らぬ者なら、憎い者ならどれ程良かっただろうか。
「残酷なものだな…」
(あの娘を阿修羅の太刀の使い手に選んだ運命も、
 そして…私も…)
普賢は幾度、阿修羅の娘があの者であることに痛みを感じただろうか。
だが己は、それを知りながらも、阿修羅の娘があの者であることに喜びを感じている。
阿修羅の太刀の使い手。
普賢はそれがあの者でなければ傍にいられたのだ。
(だが私は…)
あの者がそうでなければ巡り会うことはなかったのだ。


「一族を守るため、阿修羅の太刀は欠かせぬ。
 余計な情は無用だ」
普賢へ突き刺した言葉をもう一度呟く。
刀で刻み付けるような冷たい痛みが胸に走った。
先に普賢へ告げた時もそうだった。
遮那と普賢、姿も情の深さも違うが、ある一つは
鏡で映し出したかのように同じ想いを抱いている。
それは阿修羅の娘への想い。
ふいに遮那は呟く。それだけでは意味を成さない言葉を。
温かいがどこか寂しく、残酷な痛みが胸に生じる。


「阿修羅の娘……きら」




後書き
眷恋…想いがひかれる

超フライングで遮那の小説を書いてしまいました。
何もかもが捏造なので発売後は赤面&謝罪必至ですね。
ですが、2で一番好きな遮那の話を書くことが出来て満足です。

優の小説「琴線」では優が「愛」まで言っているのに、この方はタイトルで「恋」ですね。
自分で付けたんですが軽く吹いてしまいました。

100%私の妄想で書きましたので、イメージを崩された方がいらしたら申し訳ありません。

発売後の土下座…してたら烏に突かれそうだ…
実は本日遮那のトゥルーを見たんですが…素敵だぁ
樹さん
で、捏造具合なのですが、話が短い上に決定的なことは書いてないからそこまで酷くないよネ!と思いたいです。
取り合えずクリアした今となっては、「巡り会う」を「廻りあう」にしたい(OP参照)のと最後の「きら」と呼ぶところを「柏木きら」にしたいという感じですかね。

…あの土下座しますんで許してくださいね。(←どこまでも勝手でした)

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